待っていた?
誰かを───あの非常階段で、待っていた。
その顔も知らない誰かを想像して、心に靄が掛かるような重苦しさを感じる。誰かと、おそらく彼女を知っている、誰かが。俺なんかよりも数倍、知っている誰かと───逢うために。
「でも、もう、きっと逢えない……わ」
「え?」
シキは、そういって笑った。
とても、悲しそうに寂しそうに、笑った。
「きっと、じゃない……かな。
もう、絶対に、逢えない」
絶対に、逢えない。
こんなちっぽけな学校の、何の辺鄙もない場所で誰かを、ずっと待っていた。
体を刺すような冷たい雨が降りしきる、非常階段でたった一人、きっと逢えなくなってしまう、誰かをずっと。



