あと、11分



待っていた?

誰かを───あの非常階段で、待っていた。


その顔も知らない誰かを想像して、心に靄が掛かるような重苦しさを感じる。誰かと、おそらく彼女を知っている、誰かが。俺なんかよりも数倍、知っている誰かと───逢うために。


「でも、もう、きっと逢えない……わ」


「え?」



シキは、そういって笑った。

とても、悲しそうに寂しそうに、笑った。



「きっと、じゃない……かな。


 もう、絶対に、逢えない」




絶対に、逢えない。

こんなちっぽけな学校の、何の辺鄙もない場所で誰かを、ずっと待っていた。

体を刺すような冷たい雨が降りしきる、非常階段でたった一人、きっと逢えなくなってしまう、誰かをずっと。