あと、11分



じゃあ、お前は。

俺は手のひらを握りしめて、からからに乾いた喉から絞り出すように言う。



「どうして、俺に話しかけられたとき───逃げたんだよ……!」





彼女は、何も言わなかった。

今すぐにでも、このドアをぶち壊してしまおうか。そうしたら、すぐに彼女に逢える。今こうして俺の中でくすぶっている何の見覚えもない、記憶にすらない感情の答えが、見つかるかもしれない。

実際、俺は後ろに数歩下がって、拳を高く上げてぶち破ろうとした。


今まさに、ドアに拳が直撃する直前。



「言ったよね、ここで……なにしてるのかって」




ぴたりと、止まる。

手が止まったわけじゃない、たぶん、体が動かなかった。