何も知らない、今さっき会った人のはずなのに。 何も知らない、記憶にすらない人のはずなのに。 俺は、必死に呼びかける。視界が、ぼやけて声が震えて伝えたい言葉の半分も言えない。 「シキに、逢いたい……っ」 数秒、数十秒、ずいぶん長い時間だったと思う。 ああ、駄目だと拒否されたんだと、唇を強くかみしめた、そのとき。