あと、11分




───とん。




何かがぶつかる音がした。振り返る。さっきのは、間違いなくドアのすぐ近くからした。


「……シ、キ……?」



恐る恐る近づいて、俺はドアの前に立つ。


お願いいるなら……、返事をして。

頼むから、俺から、逃げたりしないで。



ドアに手をとん、と添えると───ドア一枚はさんだ向こう側で、震える声が、聞こえた。


「シキ、そこに……いる……?」


返事は、ない。



それは、まるで───拒絶のような沈黙。

俺と話すことを、俺と会うことを躊躇うかのように、息を呑みこむ音だけが、かすかにドアの向こうから聞こえる。

彼女は、きっとこのドアの向こう側に、いる。



ドアに添えていた手のひらをぐっと握りしめて、俺は不器用に言葉を詰まらせながら、言う。