───『わたしは、生きても、……いいの、かな』
その時、霧のようにかかっていた靄が一瞬だけ、晴れる。
青白い頬につうっと透明の滴が零れ落ちる。月の光でそれは、落ちるたびに星のようにきらきら輝いて───やがて床に染みとなって消えていく。
痛む頭を押さえながら、思い出す。思い出そうと、必死に唇を噛みしめる。口の中いっぱいに鉄の味が広がる。
月明かりに照らされた教室、そして視線の先に。
(───あ)
俺は、何度も人の肩にぶつかりながら、歩いていた足を止める。
黒板の隅、薄暗いせいでうまく見えないけれど、白いチョークで『後半組は隣の視聴覚室へ』と書かれた文字が見えた。
視聴覚室の隣、確か───特別棟の3階は空き教室だったはず。
もしかして、そこに?
俺は考えることもしないで、そのまま特別棟へと走り始めた。



