(何か、言わないと、泣くなって言え言えよ、言えよ俺) 「……え、っく、あ、あ……っ」 (でないと───) ぎゅっと、拳を握りしめた。 (でないと、シキが───壊れてしまう) 「……ぇ……」 ……シキ? シキって、誰……? あれ、なんで。 聞き覚えのないはずの、名前なのにその名前を心の中で呼ぶたび涙が零れ落ちそうになる。切ない気持ちが溢れてしまいそうだった。