「───シキ!」



ばんっと教室のドアを乱暴に開けた。

「シキ、シキ」


彼女の名前を呼びながら、教室に入る。そして、あ、と声が漏れた。


シキが、いない。

教室のどこにも。待っていて、といったのに。シキが、いない。



「シ、キ」


ああくそ。

また、見覚えのある、立ちくらみがした。それはカチ、カチ、っと静寂を包み込む教室で時計の針が進むたび、増していく。


嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。


忘れたくない、シキを、忘れたく、ない。



「……や、だ。シキ……っ」


いやだ、シキ。


シキ、シキ。嫌だ。忘れたくない。シキを、忘れたく、ない。