なんだよ、その、その言葉は。

まるでまるで───。



俺は唇を噛みしめた。時計を見上げる。もう、時間がない。



「シキ、待ってて。すぐ、香澄と来るから」



そう言って、教室のドアを開けて出る瞬間───シキは、頬から透明の滴を零していることに、俺は気づかなかった。



『お掛けになった電話番号は現在、電波の届かない状況にあるか───』


「くそっ」

俺は思わず携帯を叩きつけそうになるのをこらえて、もう一度香澄に電話をかけなおした。……でない。


真っ暗な廊下を一人はしるたび、不気味な音が響き分かってとても不愉快だった。汗で張り付いた前髪を振り払うと、俺はもう一度周りを見渡す。


(なんで、アイツ電話に出ないんだ……!)


これじゃあ、俺がシキを忘れてしまう。

シキを、忘れて、消えて───あ、れ。