「スイ」

「……なに?」

「わたしね、すごく、嬉しかった」

「……」

「わたしね、きっと、ここから消えてしまってもこの気持ちを忘れないと思う」



───どういう、意味だ。

彼女が、どういう意図で言っているのか、分からなかった。いや、分かりたくなかった。


額に冷たい汗が流れる。



「スイが、いてくれて」


ばん、また花火が打ちあがる。

夜空に咲いた、夕顔のように。


「スイが、助けてくれて」


シキが、こちらを振り返る。

彼女は、笑っていた。儚く、夜の光に照らされながら、小さく笑っていた。


「───スイに出会えて、よかった」