書き終わったレポートの提出がてら、本館から渡り廊下で通じる管理棟の準備室から黒いペンキを取ってきてほしい、と頼まれてしまった。
普段なら断る。
でも、今は……夕雨と一緒にいるのが、怖かった。
俺は渋々ながらを偽って、一人職員室から廊下を歩く。
窓の外に目をやると、中庭の日陰で文化祭の入り口に使う大看板の組み立てをしている生徒や道具を運び出している生徒であふれていて、さっきのことがまるで嘘だったんじゃないかって思えるほど、きらきら光って見えた。
俺はまぶしいものを見るように、目を細める。
───ぽつ。
外のコンクリートの地面にシミが出来る。
それは次第に大きく、真っ黒に染まっていく───雨だ。
空を見上げると、さっきまで降り注いでいた太陽の光が、薄暗い雲に覆われている。



