「あれから、いろいろ考えた」
先に口を開いたのは、香澄のほうだった。
香澄は、話があると人気のない裏庭までやってくると俺のほうを見向きもしないで、そのまま話し始めた。
「姉さんのこと、姉さんがまだ、ここにいるってこと。
正直、腹が立った。今更姉さんのことを根掘り葉掘りして、どうなるっていうんだよ。お前は、姉さんを知らないから。知らないから、そうやって何でもかんでも言うことができるけれど」
そこまで区切って、香澄は俺のほうを見る。
「これ以上、姉さんのことで詮索するなら止めてほしい。
だって、姉さんはここにいないんだから」
頭に、血が上った。
ここまで腹が立ったのは、久しぶりかもしれない。怒りのあまり、こいつをぶん殴ってやりたいと思うほどに。
お前は知らない。
9年もの間、ずっと一人で自分のことを何一つ知らないまま、分からないまま過ごしてきた、こいつのことを知らない。
ようやく自分を視ることのできるやつに出会っても、それはタイムリミット付きの偽りだった。



