あと、11分



ぐしゃ。

右頬に、嫌な音がした。

俺の体はその音とともに、軽く2メートルくらい後ろにふっとばされて、惨めにそのまま地面に倒れこむ。

一瞬何が起こったのかわからなくて、ぼうっと見上げたとき泣きそうになりながら倒れこんだ俺を必死に呼ぶシキの声がして、はっと我に返る。


俺を殴った香澄は、ふっとんだ俺のところまで歩いてくると、俺の上に馬乗りになって───がっと、俺の襟首をつかんだ。


「ここに、いないんだよっ!!」


叫んだ。
声を荒らげて、まるで何も出来なかった惨めな自分に言い聞かせるように。


「俺がっ、俺が、姉さんを苦しめたから、姉さんはいなくなってしまった。だから、もう」



ぽたり、冷たい滴が俺の頬に落ちる。

それは、香澄の涙。頬を止めどなく流れ落ちて、俺を殴った右頬に触れるたびじんわりと痛みを膨らませ続ける。


「逢えるなら、今すぐに逢いたいよ……っ」