「誰が、どこにいるって」
「ここに、シキがいる。シキが、ここに、いるんだ」
「ははは、なあ、本気でそれ言ってんの?」
自嘲。
香澄は怒りを爆発寸前で押しとどめるように声を潜めて、そういう。
「これが、おかしいって分かってる。でも、でも、いるんだ。ここに!
ここに、シキはいる。
───お願いだから、信じて」
そう言って、俺が顔を上げたとき。
目を、見開いた。それまで止めどなく紡いでいたはずの言葉が、詰まる
ほどに、時間が止まったみたいに。
香澄は───
「いないんだよ。姉さんは、死んだんだから。
俺が、殺したんだから」
───そうぽつりと呟いて、黒い漆黒の瞳からポロリと涙を零した。



