「……シキに、弟っている?」 「おとうと?」 言いなれない感じで、シキが言う。そして考えるように視線を上にあげてしばらくした後、 「わたしは、9年前以降の記憶は」 そう言って頭を横に振った。 香澄が弟であったとしたら、もしかすると俺に協力してくれるかもしれない。そうとなれば、いてもたってもいられなくなる。 「行こう、シキ」 俺は彼女の細い腕をつかんで、言った。 「香澄に逢いに行こう」