何かは、した。
でも、それでも、何も出来なかった……ってこと?
ぞっと、背筋が凍る。
9年もの間、自分の名前しかしらないシキがようやく出会った自分を視ることのできるやつが、何度も何度も記憶を無くしてしまう。そんな状況で、そんな理不尽な状況で彼女は何度も何度も諦めずに繰り返してきた。
「……そ、れなら。ほら、俺が忘れてしまっても誰かがお前を覚えてくれていたら、いい。
2891分を終える前に、誰かにお前のことを伝えて、そいつの2891分が終わる前に俺にそれを伝えてくれれば」
シキが悲しそうに笑った。
(前の俺も、そんなことを言ったから)
唇を噛みしめた。
自分の頭の回転の悪さが妬ましい。もっとうまく考えてくれる人がいたのなら……あ。
一瞬、頭の中に───思い浮かぶ。



