あと、11分




「わたしは───そこにいるようで、いない。いないようで、いる。そういう存在、だから。

 たとえば、ここでわたしがスイと二人廊下で歩いていたとしても、わたしという存在を認識できる人は恐らくいないでしょう。

 もともとわたしが〝視える〟人は、わたしのことをどこかで知っている人、だと思う。そうでなければ想像することすらできないもの」


「つまり、視えるやつにはいるから触れるけれど、視ないやつにはいないから触れない、ってこと?」


「うん」


シキが頷く。

しばらく、口が開かなかった。それは、どちらかといえば何も言うことが無くてというよりも、聞きたいことがあるけれど聞いていいのかわからなかったから。



「なあ、シキ」

ぼうっと窓の外を見ていたシキがこちらを向く。