シキって。なんで、俺こいつのこと、シキだって。
振り返った彼女の瞳が、大きく揺れた。口元が動く。震えていて、掠れていて、聞こえなかったけれど、彼女はきっとこういった。
───「信じて、待ってる」
その言葉に、俺は地面が揺れたんじゃないかってほどに酷い立ちくらみを感じた。
知ってる。
俺は、こいつを───シキを、知ってる。ずっと、ずっと、知ってる。覚えもないのに、記憶にもないのに、それでも彼女を知っている。
「ぁ、あ……あ、れ」
視界が、訳もなく滲んだ。
俺は制服の袖で乱暴に擦りながら、
「ご、めん。いきなり泣かれて、迷惑、だよな。
ごめ、んごめんっ、ごめ、ごめん……」
あれほど散々流した涙が、馬鹿みたいに溢れ出す。



