───シキ。
目を閉じたとき、真っ先に思い浮かんだのは今にも殺してしまうんじゃないかってほど睨みつけてくる、香澄が言った言葉。
シキ。
知らない。
そんな名前、知らない。……知らない。なのに。
「……あ、れ」
ぽつっと、冷たいものが頬を流れる。それは、留まることを知らないように、止めどなく、流れ落ちる。
「……なん、で」
声が、震える。
なんで、こんな気持ちになるんだろう。悲しくて、切なくて、そして苦しくて。
覚えのない感情が、押さえていた心の中からあふれるように俺の頬を涙が伝う。
「……シキ、シキ」
(シキに、逢いたい)



