聞きなれた溌剌とした声、振り返ると手を振りながらこっちに走ってくる夕雨。
「どうしたの?顔、真っ青だけど」
「……別に、ちょっと考え事」
俺が顔を逸らすと、夕雨はすっと俺の頬に手を伸ばした。
びっくりして目を見開くと、夕雨は勝気な瞳をすこしだけ下げて、
「なんかあった?」
こうして、夕雨が心配している顔を見ると、自分がしてきたことが情けなくなる。罪悪感で、夕雨の顔がまともに見れなくなる。
夕雨のことを、受け止めなかった俺がこんな風に心配されるような人間じゃないことなんて、分かってるのに。
俺は、手を振り払う勇気もなくてかといって甘え続けるのは無理で、
「レポート用紙……もらったからさ、教室戻るか」
結局、いつも卑怯な逃げ方をする。
俺の言葉に、夕雨は何かに気づいたように顔をゆがめると、そうだねと小さくつぶやいて添えていた手をすっと離す。
その姿は───あの時と同じ、必死に感情をこらえて無理やり作った笑みを浮かべていて。
心の中で、小さく呟いた。
傷つけてばっかで、……ごめん。



