あと、11分




───嘘だ。


だって、シキは、あの非常階段で泣いていた。俺が来ないことに。

忘れられてしまったことに、ずっと泣いていた。

人が通り過ぎるたび、顔を上げて俺が来ないことにどれほど、心を痛めたんだろうか。

きっと後悔するって、俺を突き放そうとしたときも自分のことなんて考えないで、そう言って。

あれほど、夕雨の名前に過剰に反応していたのも、きっと自分を否定されるのが辛かったから。


それでも、シキは俺と逢ってくれた。


俺が記憶を取り戻すんだと、信じて。






今、痛いほど、伝わってくる。

彼女の嘘が、必死につこうとしている嘘が、心に痛いほど突き刺さってくる。