───嘘だ。
だって、シキは、あの非常階段で泣いていた。俺が来ないことに。
忘れられてしまったことに、ずっと泣いていた。
人が通り過ぎるたび、顔を上げて俺が来ないことにどれほど、心を痛めたんだろうか。
きっと後悔するって、俺を突き放そうとしたときも自分のことなんて考えないで、そう言って。
あれほど、夕雨の名前に過剰に反応していたのも、きっと自分を否定されるのが辛かったから。
それでも、シキは俺と逢ってくれた。
俺が記憶を取り戻すんだと、信じて。
今、痛いほど、伝わってくる。
彼女の嘘が、必死につこうとしている嘘が、心に痛いほど突き刺さってくる。



