俺は、シキに優しくされる資格なんてない。
シキの優しさに縋って、甘えて、彼女を傷つけ続けたんだから。
「っ、今から、今から……俺の、俺の記憶が消えてしまう前に……!
シキがいることを、伝えて、そうしたらシキをまた、思い出せるかもしれない」
ぎゅうっと彼女の背中に回した腕の力を込める。
悪あがきだって、分かってても、記憶がなくなってしまうことをじっと待つことなんて、出来ない。
「そうだ、夕雨に、夕雨に言って───」
あ。
そうか、……そういう、ことか。
「……〝前の俺〟はこうやって、シキを思い出そうとした、のか」
「……」
シキは、答えなかった。
でもそれは、肯定の沈黙だとすぐにわかる。



