あと、11分




俺は、シキに優しくされる資格なんてない。

シキの優しさに縋って、甘えて、彼女を傷つけ続けたんだから。


「っ、今から、今から……俺の、俺の記憶が消えてしまう前に……!
 
 シキがいることを、伝えて、そうしたらシキをまた、思い出せるかもしれない」


ぎゅうっと彼女の背中に回した腕の力を込める。

悪あがきだって、分かってても、記憶がなくなってしまうことをじっと待つことなんて、出来ない。


「そうだ、夕雨に、夕雨に言って───」



あ。

そうか、……そういう、ことか。



「……〝前の俺〟はこうやって、シキを思い出そうとした、のか」


「……」


シキは、答えなかった。

でもそれは、肯定の沈黙だとすぐにわかる。