雨の中、ひとり非常階段で泣く、シキの背中。
シキの名前だけを、思い出した俺が彼女に声を掛けたとき。そして、何してるんだって〝他人〟に話しかけたとき。
溢れる彼女の涙が、ぽとりぽとりと雨に混ざって落ちていく。
忘れないって、言ったのに。
忘れたりしないって、言ったのに。
待っていて、って、必ず行くから待っていて、ってそう、言ったのに。
信じて───って、言ったのに。
また、忘れてしまった。
また、わたしを、忘れてしまったんだ。
うそつき、うそつき。
また、わたしだけを置いて行ってしまった。
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