あと、11分




たった一人で9年のあいだ、誰も知らない、自分のことすら分からない学校に取り残されて、話しかけてもその手はすり抜けていくばかりで。


長い、長い、気が遠くなるほど、長い時間。


そして、ようやく自分に気づいてくれる存在に、出会った。


でも……それは、それは、2891分という、2日と11分という、とても短くて儚い時間の幸せ。



きっと、数日前の俺はそのことを知っていたのだろう。

彼女の記憶が、出会った瞬間からカウントダウンが始まっていることに。それで、最後の11分になって。

きっと、忘れない。

シキを、忘れないよ。

だから、待っていてって。非常階段で、待っていて。必ず、行くから。

俺を、信じて。


目を閉じて、何度も思い浮かべたあの光景を、もう一度まぶたの裏に焼き付けた。