あと、11分




───やはり、そうだったのだ。

あの非常階段で、彼女が待っていたのは他でもない……俺だったんだ。


(……馬鹿だ、俺。どうしようもないくらい)


名前の知らない誰かに、待ち合わせ時間すら過ぎて、それでも待ち続けてくれた彼女を泣かせるなんて、って勝手に嫉妬して。

それが、俺だってことにすら、気づかないで。


待ち合わせていたのは、俺で。

無責任にまた思い出すからって言ったのも、俺で。

彼女を泣かせたのも、俺で。

そんな彼女を追いかけて逢いたいって言ったのも、俺で。





「……じゃあ、俺は……俺は、シキを、何回忘れたんだ」






その質問に、シキは微笑み続けていた口元が崩れていくのが見えた。

顔を伏せるたびに、床にぽつぽつと黒い染みができていく。


それが、答えだった。


「……もう、数えるのも……やめてしまう、くらいに」