───やはり、そうだったのだ。
あの非常階段で、彼女が待っていたのは他でもない……俺だったんだ。
(……馬鹿だ、俺。どうしようもないくらい)
名前の知らない誰かに、待ち合わせ時間すら過ぎて、それでも待ち続けてくれた彼女を泣かせるなんて、って勝手に嫉妬して。
それが、俺だってことにすら、気づかないで。
待ち合わせていたのは、俺で。
無責任にまた思い出すからって言ったのも、俺で。
彼女を泣かせたのも、俺で。
そんな彼女を追いかけて逢いたいって言ったのも、俺で。
「……じゃあ、俺は……俺は、シキを、何回忘れたんだ」
その質問に、シキは微笑み続けていた口元が崩れていくのが見えた。
顔を伏せるたびに、床にぽつぽつと黒い染みができていく。
それが、答えだった。
「……もう、数えるのも……やめてしまう、くらいに」



