あと、11分



「じゃあ、じゃあ……!
 
 かっ、紙に書いたり、そ、それから、写真とか、あと、あと……!!」


自分が、空回りしていることなんてとっくに気づいていた。

俺が口に出すたびに、シキは見ていて痛くなるくらいに悲しげに微笑むのだから。



「───全部、したよ。

 思いつくことは、考え付くこと、全部、全部、試して何度も何度もやり直して……でも、でもね」



シキは、俺をじっと見つめた。

小さく微笑む彼女は、夜に咲く夕顔のように。

しとやかに、微笑みながら───夜の雨のように、静かに涙をぽつりと零して。





「だめだった。全部、だめだった。

 手紙を書いた。でも、時間が過ぎればなかったみたいに消えてしまう。
 写真を撮った。でも、スイの隣にはわたしの姿は、なかった。
 
 約束をした。でも、そのたびにスイは、…………現れては、こなかった。


 
 世界はわたしを、否定し続けて。

 世界はわたしを、許してくれなくて。

 世界はわたしを、殺し続けて。

 
 
 
 
 ───スイが、わたしを覚えていてくれたときは、一度もなかった」