「腕をすり抜けて倒れこんだスイを、見て。
……何でだろう、って思った。何で自分だけが、こんなに、辛い思いをするんだろうって。どうしてなんだろうって。
目を覚ましたスイは、わたしに気づかないで、教室を出てってしまった。何でこんなとこにって不思議そうに。
ばかだよね、わたし。
少し期待してたんだ、
たとえ目を覚ましても、スイが、もしかしたら……もしかしたら、わたしのことを覚えていてくれるんじゃないかって、忘れないでいてくれるんじゃないかって、見つけてくれるんじゃないかって。
……本当に、ばか、だよね」
シキが悪いわけじゃない。
なのに、傷つくのは、いつだってシキだった。
きっと、俺は───あの時の夕雨のように、全部忘れて、シキの記憶を、全部無くして、後ろで泣いているシキのことなんて気づかないで教室を後にしたんだろう。



