「ひとつずつ、説明していこうと思う」


シキは、そう言いながら長らく使われていない机をすうっとなぞる。


あの時の、空き教室。

俺はシキに移動しようといわれて、言われるがまま、何も考えることすらできないで、彼女の後ろを付いていった。


こひゅっと乾いた喉が、音を鳴らす。

足がうまく動かなくて、俺はドアの一歩前に踏み出すことは、出来なかった。


「……わたしが、死んだこと」


シキが、死んだこと。

ここに、いない、こと。


「わたしは、9年前に、死んだ───でも、」


シキが、悲しそうにくすりと笑った。

その笑みを見るたびに、俺の胸はナイフに切り裂かれでもしたように鋭い痛みが襲って、張り裂けそうになる。