冷たいドア越しに未来なんて分からないだろって言う俺に、彼女は言ったじゃないか。
───『……分かるよ。だって、もうそれは……決まっていること、だから』
───『きみは何か勘違いして、る。わたしはきみと一度も逢ったことないし、話したこともない───赤の、他人』
全部が───俺を真実から遠ざけるための、嘘。
逢いたいだなんて言って、好きかもしれないだなんて勝手に思って、未来なんて分からないだなんて言って。
全部、忘れてしまったくせに。
忘れて、消して、また彼女と話そうだなんてなんて都合のいい話なんだろう。
そのたびに、シキが傷ついていることも傷つけているのが自分だってことも綺麗さっぱり消して。
あの時、彼女に話しかけなければよかった。
あの時、彼女の名前を呼ばなければよかった。
あの時、彼女を追いかけたりしなければよかった。



