シキはそういって、笑っていた。

まるで───〝俺と一緒にいた〟ことがあったみたいな口調で。


でも、俺にはその記憶がない。この2日間以外に、彼女と話した記憶も、見た記憶も、何もない。でも、どこかで逢ったような気がして、彼女とどこかで話していた気がして。


どこかで逢っている?


どこで。

分からない。

いつ。

シキはこの前、と言っていた。この前残ってたもんね、と。


この前残っていた……?そんなこと、あった?

だめだ、思い出せない。


本館に戻る渡り廊下に差し掛かると、ざわざわとざわめく声が聞こえてくる。きっとお昼の時間も削って文化祭の準備をし始めているんだろう。

昨日は雨ばかりで看板制作とか遅れているだろうし。居残りしてるやつもいるだろう、青春してるな羨ましくないけど。


「……あ、れ」


足が、止まる。

……居残り?


あれ、あれ、……あれ?