転入生、そうか、なら───誰も知らなくても、おかしくない。
そういえば彼女は俺の教室へタオルを一緒に取りに行ったとき、後ろの黒板に書かれていた文字を見ていいなあとつぶやいていたじゃないか。
まだクラスに入っているのか、入っていないのか曖昧な状況で、シキのような人にクラスと関わり合いを持つのは、酷かもしれない。
慣れない学校。
慣れない生徒。
シキだって学生なんだから、文化祭だってやりたいって思うはず。思う思いを口に出せなくても、心の中では思っているんだろう、きっと。
「そっか、そうだな」
正直、ほっとした。
ぐらついていた心がすっと元通りになっていく。俺は逸らしていた視線をシキに戻す。
「……う、ん。今まで黙ってて、……ごめんね」
そういいながらシキは俺に最後の一冊を渡してきた。
一つだけ気がかりだったのは、シキの表情がぎこちなく笑っていたことだけだった。



