あと、11分







「───スイは、私といたよ」



夕雨が、そういう。

はっきりと、断ち切るような口調で。

いきなり声を張り上げてそんなことを言うから、俺は少しだけ驚いて目を見開いた。隣にいた凪も驚いたように一歩足を後ろに下げる音が聞こえる。


そんな俺の変化にも気づかないほど、夕雨は余裕のない、いつもの強気な口調でもう一度念を押すように、言った。


「───スイは昨日、お昼私といた。そうでしょ?」

「……」


じっと夕雨が見上げて、無言の圧力をかけてくる。


(なんで、そんな───そんな焦ったような顔してる)

口に出そう、とのどの前までは思ったけれど、結局言えなかった。


だって、はっきりとした記憶がないから、多分そうなんだろう。俺は昨日夕雨と一緒にいた、んだと思う。嘘をつく理由なんてないし。

俺が小さく頷くと、夕雨は安心したようにほっと肩を撫でおろすと、いつものように強気な口調に戻っていた。