あと、11分



大きな脚立に腰を下ろして、下で本を手渡してくるシキに視線を向けた。


「……ごめん、なさい。急な用事を、思い出して」


シキが俺から視線を外した。



きっと、彼女は嘘をついている。

でも、その嘘を見破るのが怖かった。シキのことが知りたいと思う。でもその反面、シキを知った時知った分だけ傷つくのが、怖い。


「どうして、あの時夕雨の名前に反応した?
 
 夕雨のこと、知ってんの?」


本を手渡そうとしていたシキの手が止まる。


「知らない、わ。……ただ、知り合いに、似た名前の人が、いて」



そして囁くほどの小さな声で、呟く。

聞いたことのある声音だった。隠し事を守れなかった子供のような、そんな罪悪感に押しつぶされそうな声。