あと、11分




それ以上彼女に何かを言うことは、出来なかった。

〝約束〟は破るためにあるんだから、結んでくれるだけでいいと俺が言うと、彼女は頑として首を縦には振らなかった。


〝約束〟は守るためにあるものだと、彼女は言った。


「あの時、シキは何で急にいなくなったんだよ。心配したんだけど」


図書室。

俺とシキは誰もいない(多分もう授業始まっているだろうし)図書室で、彼女が両手に抱えきれないほどの本を半分持ってやってくると、それを本棚に戻している最中だった。


彼女に聞きたいことは、たくさんあった。

どうして、あの日───突然消えてしまったのか。

どうして、あそこまで過剰に夕雨の名前に反応したのか。


どうして、……どうして。





どうして、誰も───誰も、シキを知らないのか。