俺は首を傾けて、凪に聞いて見る。
「あったぞ。俺が昨日の昼に慌ててこさえてただろうが」
「……そうだっけ?」
昨日───、そういえばそんなことがあったっけ。頭を掻いて思い出してみようとするけれど、何も思い浮かばない。
まるで、昨日の昼の時間のことがすっぽり抜け落ちているみたいに、思い出そうとすると霧靄が掛かったみたいに思い出させないように阻んでいるような、そんな感じ。
凪は、あ、と思い出したように、
「あーでもそん時、スイいなかった気がする」
「俺が?」
どっかで昼寝でもしてたっけ。……覚えがないや。
ただ思い出そうとするだけなのに、心の奥に何かがつっかえて、じわりと目の前が霞むような立ちくらみに襲われる。
それはなんともないほどの、軽い眩暈みたいなもので───俺は額に手を当てながら、
「俺、なんか忘れて、」



