触るなっ、そう言おうと引っ張られた袖を振り下ろそうと後ろを振り返る。
「スイ、ちょっと待って」
「……夕雨」
一つにまとめた髪を振り乱しながら、俺の袖をつかんだのは夕雨だった。
夕雨は乱れた息を何度か息を吸って落ち着かせると、ゆっくりと俺の顔を見る。
意志の強い、誰からも有無を言わせないまっすぐな瞳。
その瞳に映るのは、情けないくらいに顔を歪めて泣きそうになっている自分の顔だった。
「……なんだよ」
どうして、夕雨に強く当たるような口調になってしまうんだろう。
シキがいなくなったのは夕雨のせいじゃない。
なのに、強く当たってしまうのは、きっと自分が弱いから。弱いから、誰かに当たることでしかこの不安を押しとどめる方法が、見つからなくて。
「これから授業だってのにこんなとこで何してんの」
「……」



