それなら、それでいい。
これがもしかしたら、悪夢なのかもしれない。
俺はずっと、長い間夢を見てて本当に長い長い夢を見てて。
そうだ、どっかでほら、階段とかで足を滑らせてそれで、意識を失ってしまった。
ずっと、病院のベットの上で馬鹿みたいにすやすや眠ってて。
このまま倒れて気でも失ってしまえば───シキのいない、こんな悪夢から目覚められる。
……こんな都合のいいこと、あるわけないか。
噛みしめた唇から血が出たのか、口の中に鉄の味が広がる。
息がもう、限界で俺はだんだん足のスピードが遅くなっていく。そして、立ち止まったその時。
「───スイ!」
ぐいっと誰かに引っ張られた。



