夕雨。
何度も言ったこの名前は、おそらく母さんと呼ぶよりも父さんと呼ぶよりもはるかに呼んでいる。俺の、幼馴染。
夕雨は上一つにまとめた髪を揺らしながら、どすどす俺に近づくと───
「なんだよ、じゃないでしょうが」
「なんですか」
「そういう意味じゃないっつーの」
「何怒ってんの?17歳で眉間の皺発見」
「触んなっハゲ」
俺が夕雨の眉間に人差し指を当てると、夕雨は忌々しげにそれを払うと、
「スイ、生物のレポート昨日提出なの忘れてたでしょ!」
俺を指さしてそういうのだ。人は指さしちゃいけませんって、お前の母さんよく言ってるだろうが。
「……そんなのあったっけ」



