声を聞くたび、好きになる


「そんなことがあったんだ。全然知らなかったよ……」
「ごめんね、勝手なことして……。離婚してお父さんの親戚と接触がなくなったとはいえ、ミユにとって海音君は大切な友達だったのに……」

 しょんぼりしていたのも束(つか)の間、お母さんは興味津々といった面持ちで前のめりになる。

「ミユが結婚するのは寂しいし娘を取られたみたいな感じがして面白くないけど、海音君が相手ならまだ許せるかな~」
「またその話に戻るのっ!?っていうか、ものすごい上から目線っ!」
「親なんだから子供より上でしょ?ミユもまんざらじゃなさそうだし~。それに、昔から海音君はミユを気にして優しく接してくれてたのよ。

 夏休みだったかしら。ミユ、川遊びで足をケガしたでしょう?ガラス片みたいな鋭い物で切ったから、血は止まらないし歩けないしで大変だったらしくて。その場には子供しかいなかったから、海音君は暑い中ミユを背負って一時間もかけて病院に連れていってくれたの。

 あの時、ミユの心配をする一方で、私は海音君の男らしさに感激したのよ。王子様みたい!って」
「そんなこと、あったかな?」

 ケガのことは覚えている。子供だったせいか麻酔はしてもらえなくて、看護師さん数名に取り押さえられながらケガした部分を五針縫われた。ものすごく痛かった。

 小学生になる前の子供には強烈な体験だった。そのせいで、病院に行く前のことは忘れてしまったんだろう。

「今回も、海音君すごく心配してたわよ。ミユが酔いつぶれたこと。

 覚えてない?警察に保護された後も、ミユ、酔って泣きわめいてたそうよ。きっと、私とのことで何か言ってたんじゃないかしら。じゃなきゃ、海音君が私達親子の問題に口を出してくるわけないもの」

 その時私は海音の前で、お母さんとの関係だけじゃなく、流星のことで悩んでいるということまで話してしまっていたのかもしれない。

 それだとしたら、海音が私の心の内を色々知っているような発言をしたのも理解できる。


 お酒の恐さを、こんな形で思い知るとは思わなかった。

 飲みすぎない。もう二度と。


 平静を装ってたけど、お母さんと話しているうちに頭が混乱していた。いや、混乱というより衝撃。

 お母さんから身の上話をされたこともそうだし、海音と親戚だったなんて。