声を聞くたび、好きになる


 東の空が明るい。

 キャラクター全ての原案を送る頃には夜が明け、朝になっていた。

 ご飯や睡眠も忘れてイラスト製作に没頭する。そういえば、契約書を書く時、海音もそう言っていた。そういう作家は多いって。

 その話を聞いた時は体に悪そうな生活だなとちょっと思ったけど、そんなことはない。精神的にものすごく充実し、生き生きしているから。 


 作業にキリがつき集中が切れたせいか、今後クセになりそうな疲労感が全身にのしかかる。

 出版社からの返信を待たず、そのまま私は床で眠ってしまった。



 夕方まで熟睡したらしい。

 マナーモードにしていたスマホのバイブ音で、私は目を覚ました。

 繰り返し着信を鳴らしているのは、お母さんだった。こんなにしつこく電話してくる人じゃないのに、珍しい。

 よく見ると充電がなくなりかけているので、充電器をコンセントに差し込みながら電話に出た。

「はーい」
『良かった、やっと出たわね!』
「??」

 寝起きなせいか、お母さんがなぜそんなに慌てているのか分からない。

『ミユ、昨日、警察に捕まったんだって!?芹澤さんが対応してくれたから良かったけど、大丈夫だったの??』
「大丈夫だよ。って、ちょい待ち!私は捕まったんじゃない、保護されたの!」
『どっちも同じようなものでしょ?心配かけて、まったく……』
「全然同じじゃないっ!心配かけたのは悪かったけど」

 心なしか、お母さん、前より明るくなった気がする。っていうか、こんな天然発言かます人だったっけ??

 昔からずっと家庭の空気に無関心だった無口なお母さん。いくら警察に迷惑をかけてしまったとはいえ、こうして心配の電話をかけてくるなんて……。喜ぶ以上に驚きが勝ってしまう。

「もうこっちは大丈夫だから、切るよ。お母さんもこれから仕事でしょ?」
『ううん、今日は休んだわよ?』
「何でっ!?」
『ミユが警察沙汰起こして芹澤さんに迷惑かけるからでしょ??心配で仕事なんかしていられないわよ』
「心配かけて悪かったけど、もう解決したから仕事に行って?じゃあね」

 今さら、心配なんかしてくれなくてもいいのに。

 それに、海音と面識ないくせに、彼のこと知った風な口聞いて……。お母さん、海音にまで変なこと言ってないといいけど。