声を聞くたび、好きになる


「謝るよ。だって、イラストレーターの仕事に誘われたミユのことがうらやましすぎて、私、ウソついたから」

 モモは、自分の顔の前で両手を合わせ、目をかたくつむった。

「ごめんね!芹澤さんがミユのプリクラ見て可愛いって言ってたっていうの、ウソなの!悔しくて、なんか、ミユを困らせたくなって、そんなこと言ったの私!」
「分かってるよ」

 最初から信じてなかった。そっか、私を困らせるために、モモはそんなウソを……。

「私も同じ。だから謝らないでいいよ」
「ミユ……。怒らないの?」
「だって、私もモモのことうらやましいと思ってたから。私にはないもの、モモたくさん持ってる。夢を叶えるために専門学校に通ってることとか、新しい友達を作る社交的な性格とか、芹澤さんに仕事の話をされた時に私の背中を押してくれたこととか。私にはないものだらけで、本当にうらやましい」

 日記に書いた時みたいにグログロした感じではなく、私は穏やかな心持ちで語る。

「話してくれて良かった。私はそれでもモモが好きだし、大切な友達だって思ってるよ」
「それは、私も同じ。専門学校の友達も好きだけど、ミユの大切さは次元が違う」

 モモは恥ずかしそうに視線を動かし、

「でもね、プリクラの話は、ウソだけどウソじゃないよ!芹澤さん、ミユのプリクラに見とれてたもん!」
「その話は信じてないよ、最初から」
「ウソは白状したじゃんっ!これはホントの話なんだよう!」
「芹澤さんが私のプリクラに見とれてた?モモの勘違いだよ」

 芹澤さんは、どんな女性にもモテそうな人だった。仕事の話をするところもスマートだったし、外見も性格も良かった。あんな人が身近にいたら、女の子達が惹かれないわけがない。

「本当だよ!?口には出さなかったけど、見てたら分かるもん!芹澤さん、ミユのプリクラに釘付け!って感じで、ぼんやり見入ってた!芹澤さんのタイプなんだよミユはっ」

 同じ話を一生懸命繰り返すモモにあいまいな笑みを返し、私は次のお酒を注文した。モモの分も一緒に。

 私を説得するのを諦めたのか、新しいお酒が運ばれてくると、モモは流星の話をし始めた。

「最近、流星さんとは会ってる?さっき、雑誌見てたよね」
「……会ってないよ。これからも会うことはないかもしれない」