流星があの日、私の日記を見て厳しいことを言ってきた理由。それは、私の生き方を否定するつもりではなく、仕事のことで息詰まった末の八つ当たりだったのだと、流星は語った。
『あの夜、ミユんちに行く前に花崎華さんと飲みに行って、帰り道、先輩に言われたんだ。『うかうかしてると、お前も花崎さんに追い抜かれるぞー』って。その先輩、前々から俺にライバル心みたいなのがあって、ことあるごとに嫌味言ってくるんだ』
流星も、デビュー当時は有名な声優に嫉妬した経験があるから、その先輩を嫌いにはなれないと言った。
『ライバル心があるのはいいことだ。それがあるから俺は向上していけるし。……でも。その日は、収録中何度もダメ出し食らって疲れもたまってたから、先輩の嫌味をいつもみたくかわせなくて、言い合いになって……』
顔が良い奴はいいよな、それだけで人気声優になれるんだから。先輩に言われた心ない言葉で、流星は大きなダメージを受けた。
『いつもの嫌味なんだから適当に聞き流せば良かったのに、あの時はまともに受け止めちゃってさ。日頃の努力や今までの成果を全否定されたような気持ちになった……』
そんな心境で私の日記を見たから、つい尖ったことを口にしてしまった。私のことは理解している。
流星はきっぱりそう言い謝ると、最後はやっぱり、合鍵を返すと言って聞かなかった。


