「もしかして、最近私が避けてたこと怒ってる?本当にごめん。もう、しないから……」

 お願い。離れていかないで。

 祈るように、私は言った。

「合鍵、流星にだから預けてるんだよ?誰だっていいわけじゃない……」
『ありがとな、嬉しい。ミユの気持ちは分かってる。いつも俺を頼ってくれて、全面的に信用してくれて、仕事のことも笑顔で応援してくれる。大切な…妹だ』
「そうだよっ!私、流星が声優になる前から流星のファンなんだよ!これからも流星から色んな話聞きたいよ……」

 数秒の沈黙。流星がためらうように切り出した。

『ありがとう。でも、俺は、そんな大切なミユを傷付けた。働いてないミユを否定した。そんな自分が許せないんだ』
「そんな……」

 私が落ち込むならともかく、流星がそのことをこんなに深く気にしているなんて、思わなかった。たしかに、私は流星に今の暮らしを否定されて大きなショックを受けたけど。それ以上に、合鍵を返されることの方がつらい。

「だからって、別に合鍵まで返さなくても……」
『ううん。ケジメだから。ちゃんとミユに対して一線引かないと、俺はまた、ミユに甘えて無意味に傷付けてしまいそうだから』