ドキドキとヒヤヒヤ。おっかなびっくりな調子で電話に出た私とは真逆に、流星はものすごく明るい声で元気に話し出した。

『や~っと出た!もう一生話せないかと思ったって』
「それは、私も……」
『そうだよな。俺ら、今までケンカらしいケンカしたことなかったもんな』

 陽気な口調は一変、流星は真剣な声で言葉を継ぐ。

『いくら幼なじみとはいえ、ミユの日記勝手に見て、本当にごめんな。そのこと、どうしても謝りたかった』
「もう、いいよ」

 流星の言葉に傷付いたのは紛れもない真実なのに、この時久しぶりに流星の声を聞けたことが猛烈に嬉しくて、私は嫌なことを忘れてしまいそうになった。

「日記見られた時は焦ったけど、ちゃんと閉じておかなかったのが悪いんだし、謝らないで?」
『そっか。ありがとな、そんな風に言ってもらえるなんて思わなかったから救われる』
「私こそ、ずっと連絡無視してごめんね」
『気にするな。ミユがそうしたくなるのは当然だし』

 生まれて初めて人とケンカをした私でも、この後は元通りの関係に戻れると信じていた。流星なら、きっとそういう流れにもっていってくれるって……。

 流星との関係を振り返ったら、私がそういう前向きな思考になるのは自然なことだと思う。