声を聞くたび、好きになる


 日記帳を、その後流星に見られるなんて、私は全く思っていなかった。

 気が抜けていたとしかいいようがない。私は、そのページを自分の部屋の机に広げたまま放置してしまった――。


 その日の夜、仕事を終えた流星は何の前触れもなくウチにやってきて、昨日のことを謝ってきた。

「ごめんな。酔っぱらってたみたいで、何したか全く覚えてないんだよ。起きたらミユが抱きついてきてるし、ビックリした」

 いつもと変わらず、流星ははははと笑う。

 アルコールのせいとはいえ、昨日流星に抱きしめられて私はあんなに意識したのに、流星にとっては猫にじゃれつかれたのとたいして変わりないみたいだ。

 やっぱり、妹ポジションは簡単に変えられないのかな……。流星の軽い反応にショックを受けてしまう。

 私の気持ちに気付くわけがない流星は、昨日、アルコールを飲むに至ったワケを話した。

「ミユさ、花崎華(はなさき・はな)って知ってる?」
「うん。去年デビューしたばかりの新人声優さんだよね」
「ああ。彼女、昨日、俺らの収録現場に挨拶に来たんだよ。来月から彼女、今俺がやってるアニメにゲスト出演が決まったとかで」
「へえ……」
「で、昨日は花崎さんと仕事をする前祝い!みたいな感じで、急に飲みに行く流れになってさ」