声を聞くたび、好きになる


「あー。知らない間に寝ちゃったんだな、俺……」

 流星は半分眠そうな顔で部屋を見渡す。

 寝起き独特のはっきりしないその声は、きっと、流星のファンですら知らないものだよね?ちょっとだけ、優越感。

「なんでこんなとこで?自分ちで寝ればいいのに……」

 嬉しいのに、流星を気遣うフリでそんなことを言ってしまう。

「明日も忙しいんだよね。早く帰ったら?」
「やだ。ミユのそばにいる」
「完全に寝ぼけてるね、君は」

 いつもの冗談。わかっているから、私はあまり喜ばないフリをする。

 普段は頼りになるお兄ちゃんって感じなのに、たまに流星はこうやって甘えてくる。

「寝ぼけてない。ミユが電話切るから悪いんだー」
「……わかったから、早く起きてね」
「わかってないっ」
「……っ!!」

 急に、流星に抱き寄せられる。体勢を崩し、私はソファーに寝そべる流星の胸元に倒れ込んでしまった。

「ちょっ、流星!離してっ」

 みるみる、体が熱くなる。

 流星、まだ寝ぼけてる!?

 どれだけもがいても、流星の両腕の力は強くて、私は離れることができなかった。