秋吉さんにあんな電話をもらったら、誰だってそうなると思う。困り顔でうつむく私の頭を撫で、海音は言葉を継いだ。
「この前の電話で、ミユ、言ってたよな?エリカから連絡もらったって。嫌な予感がしてアイツを問い詰めたら、ミユに攻撃したことあっさり認めたよ。
エリカは知り合った時から嫉妬深いやつで……。付き合ってた時も、俺と仲のいい男友達に勝手に電話して俺の行動を探ったりとか、隠れてメールの中身を見るとか、普通にする女だった。
こんな話、ミユにはしたくないから黙っていたかったけど、それで誤解させて傷付けたくないから話す。……エリカはな、お前の存在が面白くなかったらしい」
海音は全て話してくれた。
秋吉エリカさんは、専門学校を卒業した後すぐに漫画家デビューしたが、その作品は売れず連載は打ち切りになった。
漫画家の夢を諦められなかった彼女は、有名な漫画家のアシスタントをして生計を立てながら今も投稿生活を送っている。
私がイラストレーターになる前に紙川出版の絵師をしていた有能なイラストレーターというのは、秋吉さんの先輩に当たる人。
先輩を尊敬しその背中を追いかけていた秋吉さんは、病気で仕事を辞めた先輩を見て自分のことのように深く落ち込んだ。だからこそ、後釜みたいな形でイラストレーターデビューを果たした私のことが目ざわりだったらしい。
「先輩のことは抜きにして、エリカはミユの実力を認めていた。だからなおさら、先輩の居場所をミユが奪ったように感じたそうだ。だからってミユを傷付けていい理由にはならないし、俺はエリカのしたこと許す気はないけどな……。
盗作騒ぎの件も、エリカが関わってた。
うちの会社と専属契約を結ぶ前、ミユはオークションでイラストを出品してただろ?それを買い取った誰かがミユがプロになったことを知り、ミユから買い取ったイラストを転売していたんだ。プロ絵師のデビュー前のイラストとあれば、多くの入札が入り自然と高値がつく。よく、原作者のサイン入りコミックがオークションに出品され人気を得て売れるのと同じ原理だ。今や、日本全国にミユのファンがいるからな」
秋吉さんは、転売された私のイラストを買い取り、それを盗作された側のイラストとして画像におさめ、嘘情報をネットにアップした。
私が以前オークションで自作イラストを売っていたことを知る人は少ないので、秋吉さんの情報を信じる人は多かった。情報に流された人達が、私のイラストは盗作により完成した物だと騒ぎ、ネットを介して瞬く間に誤情報が広がった。
秋吉さんの目的は、私をイラストレーターでいられなくすることだった。しかし、それだけではない。
「エリカとは、別れた後も共通の友達を交えて会っていた。別れた直後は気まずかったけど、最近ではいい友人として付き合ってた。仕事柄、アイツの相談を受けることも多かったし……」
お互い男女を意識しない友人関係。そう思っていたのは海音だけだった。


