声を聞くたび、好きになる


「女の子はよく、男は軽いーって言うけど、男にとって好きな人に告白するのって最大の勇気がいるんだよ。お姉さんの好きな人だって、お姉さんに好きって気持ち伝える時ドキドキしてたんじゃない?俺だって、先生に告白する時心臓止まるかと思ったし……」

 告白に最大の勇気を使う?いつもひょうひょうとしてつかみどころがなかったけど、海音もそうだったのかな?

「だいたい、遊ばれてるんだとしたら、さすがにお姉さんも気付くんじゃない?色んな女に好意振りまけるほど男ってそんなに器用じゃないんだよなー」
「大人っぽいこと言うね、君……」
「また子供扱いしたなー!?」
「そんなことないって」
「ほんとにー?」

 むくれる男の子を前に私は本当に感心していた。最初ナマイキで変な人扱いしてしまったことを謝りたい。

 私のダメな所を嫌味なく指摘してくれる彼に、自分が成長させられているような気がする。

 この子の言うことに、ハッとさせられてばかりだった。

 黙ってうつむく私を見て言い過ぎたと感じたらしく、男の子の声音はやや柔らかくなる。

「ごめん。お姉さん。ヘコまないで?」
「ヘコんでないよ。自分では気付かない欠点とか教えてくれてありがとう」
「ううん。別にいいよ。じゃあさ、最後にいっこ訊いてもいい?」
「いいよ。何?」
「今、好きな人の声聞きたいと思う?」

 海音の声。聞きたい。

「聞きたいよ。嫌いになるつもりだったのに、無理……」

 抑えていたはずの涙が、こぼれ出す。

「大丈夫だよ。その気持ち、間違ってない。お姉さん、恋してる顔だもん」

 私の手にそっと自分の手を重ね、男の子はつぶやいた。

「傷付いてもそばにいたいと思えるのなら、それは本物の恋だよ。誰にも邪魔できないし壊せない、本物の……」


 1分ほどして、待っていた電車がホームに滑り込む。ついてくると思ったのに、男の子は違う車両に向けて歩き出した。

「高校卒業する日まで、俺、先生のこと待つ。こう思えたの、お姉さんと話せたおかげだよ」
「頑張ってね!」
「お姉さんも、うまくいくといいね」

 私達はそれぞれの車両に乗り込み、目を合わせることでさよならを告げ合った。


 来た道を、戻っていく――。


 あの男の子の言う通りだった。私は海音に大切なことを訊けていない。

 確実な答えをもらうのは恐いし、訊いたところでうまくいくかどうかは分からないけど、勇気を出して話してみよう!

 声を聞くたび、海音のことを好きになっていたから――。自分の気持ちが向かう先を信じて。