声を聞くたび、好きになる


『ご飯ちゃんと食べたか?』

 その夜、流星から電話があった。

『収録長引いてて、もしかしたら今夜はミユのところ行けないかも』
「そうなの?」
『そんな悲しそうな声出すなよ。帰りたくなる』

 えっ。何それ。なんか恋人みたいなセリフ。もしかして、まだ演技モードなのかな。

「帰ってこなくていいよ」

 嬉しいのに、昼間見たインタビュー記事のことが頭にちらつき、いつもみたく素直になれなかった。

「恋する気も起きないくらい仕事が楽しいんだよね。がんばって」
『インタビュー記事、見たな?』
「見てないもん」
『うそつきミユ』

 まるで恋人役みたいな声で爽やかに言われた。

『だから見るなって言ったのに』
「別にいいじゃん。っていうか、うそつきは流星の方だと思うけど。昔、私が好きな人いるか訊いた時はいないって言ったクセに、インタビューには『初恋は小学生の頃』って答えてた」
『そんなん、いくら幼なじみとはいえ、ミユにまで正直に言えることじゃないでしょ。察してよ』
「むうっ……」

 なんか、突き放された気分。

「そうだね。分かったよ。もういいっ」
『ちょっ、ミユ!?』

 ブチッ。スマホの電話を切る音が悲しく響く。

 感情任せに電話を切ってしまった。せっかく仕事の合間に電話をくれたのに、私サイアク。こんなんだからいつまでも流星に妹扱いされちゃうんだ。