「お姉ちゃん、ちょっと来て」

私はそう言って、お姉ちゃんを廊下に連れ出した。


「何よ?」


お姉ちゃんは呆れた顔をして、私を見つめ返す。


「何でお父さん連れてきたの?」


小声でお父さんに聞こえないよう、コソコソ話。


「お父さんだって知らなかったのよ!
ただ、お腹空かせてたし…
貧富の差はあってはならないと思ったから連れてきただけ!
それに家の玄関から出るのを目撃して、美桜の友達かな~と」


お姉ちゃんの目は節穴かぁ?それとも視力が悪すぎて見えないのかなぁ?


何で私の友達という解釈に成立してしまう訳!?


まてまてー!私の反論も聞きたまえ、お姉ちゃん。


「そうであっても気にならなかったの?
だ、だってオネエだよ?」


し、しまったー…

お姉ちゃん、オネエ好きだったんだ。


「何言ってんのよ!
私はオネエにはこう見えて興味があるのー」


「そうだったね」


「そろそろ行くからね」


「うん」



お姉ちゃんは私にそう言い残すと、お父さんがいる元に戻って行った。


私は一人ぽかーんとするばかり。



玄関から漂うバラの香水と、お姉ちゃんが毎日付けていっているシャボン玉の香水の甘い匂いと爽やかな匂いが交わり、不思議な香りがする。



私の鼻おかしくなった。


くんくん。

少し嗅いでみると、やっぱり不思議な感じ。


まるで味つきガムの食べあわせで
違う味に変身するようなそんな感じ。



他人の装いをしないで、ズカズカと家に入り込んで来るのは…やはり家族なんだと実感する。




それが普通なのか・・・