ひろくん探しは夜な夜な続いた。

数日後には、友達の友達、の友達…

私が顔を知らない人間までもが
話を聞き付けて、動いていた。

話の内容が同情をそそるからだ。

3才の時に親の離婚で生き別れた
父親からもらった高価なネックレス
少女A(私)の一番大切な宝物。

私は地元じゃなく、大学で来た
土地だから、よくわからなかったが、

どうやら、地元でとても有名な
暴走族関連の、お偉いさんも
動いてくれていて…それが、
決め手となったようだ。


ひろくんの耳にその先輩から
探されてることが入った瞬間の
出頭。自ら、私の前に現れた。

細かいことは忘れたけど…

とにかく雨の激しい日、
彼は私と私の親友(女)の前に、
正座して…ネックレスを返した。

とりあえず、ホッとした。

私の首に、慣れた重みが戻った。

彼には、恋心より、
逃げ隠れした情けなさと
裏切られたショックが残った…。

恨み言を、ブツクサいったあと、
煮え切らない態度の彼に、
私たちは、気が晴れず…

ちょっとムッときて
少し脅したんだ…。

さて、じゃあ、後は
男の先輩に引き渡して…
好きにしてもらおうか…

彼は黙って、うつ向いて…
ただ一言、「トイレに行っても
良いですか?」と言った。

そこにはもう、私の好きになった
クールでカッコいい彼の姿はなかった。